完璧なもの、歪んでいるもの

人間の幸福は絶対的なものです
相対的なものではありません
たとえば
あいつが100幸せで
おれは80幸せだから
おれはあいつより20不幸だ とか
そういう考え方はできないわけです
しかし
日本人はそう考えます
トール・ポピー・シンドロームという言葉があります
ポピーと言うのは植物のなまえです
他のより背の高いポピーを叩くという病質です
日本人はこの病質の塊のようなものです
ひとが幸福そうなとき
自分がその幸福に満たないと感じたとき
日本人は
自分が幸福になるよりも
そのひとが自分くらい不幸になることを願います
ネット上の掲示板を見てください
匿名と名のつくもの
どれも嫉妬、批判、罵倒で埋め尽くされています
これが日本人の本音です
人の幸福や功績
その作ったものに文句をつけることで
自分の心の安定を図っているのです
そうして非難のインフラばかり発達した状況で
作り手たちは
ずれないよう
歪まないよう
欠点がないだけのものを目指して
ものを作ります
結果として
同じようなものばかりが市場にあふれます
なんだかつまらないなあ、と誰もが思っています
でも、他人を妬むことをやめられないのです
そんなわたしたちも
ときに人の作ったものに心を打たれることがあります
それは完璧なものではなくて
ゆがんでいて
ずれていて
曲がっていて
曲がったまま伸びてしまったために
とんでもなくいびつな形に育ってしまって
それでもわけがわからないくらい純粋に
光っているものです
そういうものを作る人は
誰の忠告も聞かずに
自分のやりたいように作ったのです
そしてそれを見る私たちは
いつも人の言うことに流されて
周りにあわせて妥協して
同調しないものを排除して
排除されたものから優越感を味わって
というような醜い自己防衛のために
多くの個性を殺してきた負い目に
まっこうからその光を当てられるので
あまりに情けなくて申し訳なくて
涙を流します
いまの時代、ひとの心を打つのはそういうものです
誰かに言われて形をなおしたものや
完璧にするように歪みをなおしたものではありません
誰の忠告も聞かずに作られたものなのです